設計料とハウスメーカー・工務店・設計事務所の比較

住まい便り

 設計事務所を運営していると悩ましいのが設計料の説明です。設計料とは、一般的に間取りの検討や設計図書の作成にかかる費用です。さらに設計とセットで監理業務(管理ではなく)というものがあり、ご契約の際には設計監理業務として合わせてご請求させて頂いています。今回は設計料の考え方についてご紹介します。

設計はタダでしょ?

 これが多くの方の認識ではないでしょうか?私も何度かそう聞かれたことがあります。
おそらくは設計=間取りの作成ということだと思いますが、これにはかつてハウスメーカーなどが集客のために始めたキャンペーンの影響が大きいと考えています。現在でもそういった広告は多く見かけますし、弊社でも一部無料としている業務ではあります。では実際に設計行為が無料でできるのでしょうか?

 答えはNOです。間取りの作成だけでも1時間以上は確実に取られますので、アルバイトに考えさせるにしても時給が発生します。ハウスメーカーなどでは社員が間取りを考えるのでもっと高い人件費がかかります。それでも無料を謳う理由は、

100回間取りを提案するコストよりも、1回受注した時の利益の方が高いから

です。要は「数撃ちゃ当たる」ということです。提案回数を増やした方が確率が上がる上に、一度当たればコストが回収できるのですから数を撃ちますよね。「あとで回収できるのだから、無料ってことにしておこう」これが真実です。

企業にとって重要なのは利益率

 インターネット上にはハウスメーカーの利益率が3割〜4割という情報が多く見られます。実際にどうかというと、値引き合戦になったりするので3割かそれ以下ということの方が実情多いと思います。値引きが多い営業マンが契約しても怒られているのはよく見たものです。

ハウスメーカーは設計と施工を一社で請け負うため、総額4000万円の物件であれば、目標利益は4割の1600万円で実際契約してみると3割の1200万円に収まった、みたいな感じです。この利益を引いた分が建築のコストになりますが、建築材料と職人さんへの支払いなどがメインになるので、材料が高騰すると職人さんへの支払いが渋くなったりします。

各業態ごとの利益率のイメージ 

ハウスメーカー、工務店、設計事務所+工務店で比較してみましょう。この比較の意味は同じ金額の建物をお願いした場合の、建物自体にかけられるお金に関係します。利益率が低いほど建物の仕様が上げやすくなります。

人件費も広告費も大きい「ハウスメーカー」

 CMや展示場に、協賛など集客やブランディングに莫大な費用をかけているハウスメーカー。CMはキー局で1回150万円とも言われています。視聴率が取れる21時台のドラマや映画などは単価が高いそうです。試しに気に入っているメーカーのCMが1日に何回放送されるかカウントしてみてはいかがでしょうか。

 展示場もなかなか高額です。展示場の建設費は5000〜億単位です。最近では「リアルサイズ」志向の展示場も増えており、2000万円台の現実離れしすぎない展示場も増えています。展示場が立ち並ぶ土地も毎月地代が発生しており、知る限りでは都内で月200万円程度支払っていると聞いたこともあります。

高いことは悪いことではない

 人件費や広告費が莫大なハウスメーカーですが、研究にも費用を割いており、主要なメーカーですと独自の研究機関を組織して商品開発を行っています。高いコストを払い、高機能高水準の商品を生み出す企業努力は中小零細企業にはとても真似できない代物です。ハウスメーカーの作る家は完成された「商品」です。ブランド力もさることながら、高価格に見合った性能を保有しているのでコストに糸目を付けなければハウスメーカーで建築するのがオススメです。

建物にかけるお金が多くなる「工務店」

 これといった公的なデータはありませんが、取引したことのある工務店さんのお話では利益率は2割台が多いです。同じ金額で建てる時に最も家の中身にお金がかけられるのは工務店さんでしょう。また、昔ながらの職人気質で困っている人を放って置けない社長さんが多いのも特徴で、お施主さんとの距離が近いのも工務店のメリットです。ただ納期にルーズな現場が多いのも事実です。大手ハウスメーカーと違い、社内規律がほとんどない工務店も少なからずあるため性格的に合わない方は事前に相性を確認しましょう。(ハウスメーカーでも納期に間に合わない物件は多いですが。)

建主の見抜く力が試される

 工務店の弱いところは設計力です。最近ではデザイン工務店と呼ばれる設計も得意な工務店も増えてきましたが、実際に図面を見てみないとわからないものです。特に見た目がおしゃれなだけで、構造や温熱環境について知識のない設計も散見されます。この辺りは建主自身が知識を付けて自己防衛をしてください。最近はyoutubeでも情報発信が盛んなので、試しに1、2本興味のある分野を見てみましょう。

やや高い「設計事務所+工務店」

 設計事務所は自社で施工をしない、設計(監理)専門の企業です。かならず施工を担当する工務店がセットで家づくりを行うのが特徴で、多くの場合に工務店は数社からコスト、得意分野、施工品質などを吟味して最適な工務店を選びます。デザイン性の高いプランを作ることに加え、それぞれ特色があり、温熱環境や断熱に特化した事務所や、構造に拘った作り方、素材を生かした地域性のあるデザインを得意とする事務所など千差万別です。

設計事務所は「高い」というイメージが一般的で、その理由はこの記事のタイトルでもある設計料に他なりません。工事費に対して10%前後の設計料を設定している事務所が多く、工事費が高くなるほどパーセンテージを下げて設定したり、最低限の設計料を設定しているケースもあります。この辺りは間取り提案の内容と価格で比較して検討するのが良いです。

監理業務が重要である理由

 多くの方が監理業務について知らないと思います。管理が「保守」や「統率」を意味するのに対し監理は「監督」や「監視」を意味しています。ほとんどの場合「設計図通りに施工されているかをチェックする業務」と説明される監理業務ですが、それだけ聞くと「設計図通りに施工しない人なんているの?」と思いますよね。

実際のところ世の中にある施工不良物件の多くが監理不在の物件です。
そもそも監理を前提としない不良は工務店に見られ、監理を前提として起きる不良はハウスメーカーに見られます。

 工務店の場合は施工者と設計者が同一であるケースで、外からの監視がもともと及ばない環境で起こりやすいです。こうなると施主自身が直接確認する他ありませんが、相当な知識がないと見抜くのは困難です。
 ハウスメーカーの場合、件数は少ないのですが監理業務を設計担当が行っていないケースで起こります。そもそも企業は大きく人数は多くいても自社で監理するということは、一定のリスクを伴います。

実際こんなケースもあるようなので…

このような理由から監理は施工と切り離すべきという考え方があり、設計事務所は分離発注という形式をとっているわけです。基本的に弊社もこの考え方を推奨しています。(かくいう私もハウスメーカー時代は設計業務が忙しく現場監理どころではありませんでした。。。)

まとめ

家づくりを始めると、「こんな家にしたい」という希望と「予算はここまで」という現実が待っています。そして願わくば末長く住むために設計監理の重要性とその費用についてご理解賜れれば幸いです。

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