ローコスト住宅の矛盾

住まい便り

 家は住宅会社によって数百万円の差がついてしまうこともしばしばです。その中でもいわゆるローコスト系の住宅会社はここ十数年で一気に市場に定着しました。大体30万円/坪くらいからがローコストの部類に入ってくると思うのですが、世の中には「安かろう、悪かろう」ということで不安要素を想像される方も多いと思います。

 この記事では、ローコスト系の注文住宅や、建築条件付きの土地情報に載っているような参考プラン住宅についてリスクや見解を紹介したいと思います。

安さの理由

 家には大量の建材が使われますが、なにせ量が多いため少しづつのコストダウンが積み重なると数十万円〜数百万円の削減に結びつく可能性があります。代表例がフローリング材、幅木、クロスなど目に見えるものや、下地合板、石膏ボードなど目に見えない部材でも材料単価を抑えれば全体の費用が下がります。また、キッチンやユニットバスなどの住宅設備もメーカーから大量に仕入れることでコストを下げる工夫をしています。この辺りは、大手ハウスメーカーだろうと地場の小さな工務店であろうとやっている企業努力ではないでしょうか。

 ではローコスト系と何が違うのか。ローコスト系やビルダー系と呼ばれる、年間にたくさん棟数を建てる会社では、職人さんへの報酬を抑える傾向があります。仕組みは簡単で、報酬を下げる代わりに施工棟数を多くすることで年間の売り上げは減らすことなく、一棟あたりの報酬をうまく抑えています。問題はこの方法で施工するには、工期を短くする必要があるということです。
通常60日で完成する工事を、年間施工棟数を倍にするとしたら単純に工期は30日に半減します。仕事が早い職人さんもたくさんいますが、限度を超えてしまうと作業が雑になってしまうのは誰でも同じです。
「こんな単価ではできない」一方で「棟数がたくさんあるから食っていくにはこれしかない」といった現場の職人さんの声を聞いたことがあります。

ローコストは標準外を嫌う

 ローコスト系の特徴としてプランニングがある程度決まっていることが挙げられます。コストを抑えるためには、シンプルな形にする必要があります。凹凸のない四角いプラン、屋根は方流れ1面といった感じです。
注文住宅の醍醐味である間取りの自由は、徹底的なコストダウンによって阻まれてしまいます。中には自由設計を謳っている場合もありますが、その場合は追加見積もりと言う形になるので、気づいた時にはローコストでなくなっていることがほとんどです。

他にも住宅設備や床材、クロスに至るまで、標準品から外れたものを選んだ途端に費用が跳ね上がってしまいます。契約前にはそういった内容を全て確認できるよう担当者と話をしておく方が良いでしょう。

「とりあえず契約して後から決めましょう」は悪魔のささやきです。

 一度契約してしまうと解約には莫大な違約金が発生します。契約書などの内容も事前に熟読するなどして、後から自分たちに不利になる内容がないか確認しておきましょう。契約書にサインをした時点で、「実際に説明をしようがしまいが、同意が取れた」ことにされてしまいます。これまでもそういった相談例が数え切れないほどありました。

そこまでして買う家に価値があるのか

 住宅はほとんどの人にとって、人生で一度きりの買い物です。鉛筆や消しゴムの様な消耗品のように何度も買い替えたり、デザインや機能を短いスパンで変えることはできません。
 もし人生に一度しかペンが買えないとしたら、あなたはどんなペンを選びますか?
握り心地や書き心地、インク交換の可否やデザインなどたくさんこだわりますよね。一生に一度しか買えないのですから。

 例え話が続いて恐縮ですが、人生で一度しか買えないペンを100円均一で3本セットで買えるような廉価なもので良いと言う方はいるでしょうか?中にはそれが一番フィットするという方もいると思うのですが、ほとんどの人は選ばないのではないでしょうか?
 手の形や握る力は一人一人違います。きっとそれに合わせたペンを選んで買うと思うのです。適当に選んで一生後悔するのは嫌じゃないですか。

 極論、住めればいいと言うなら賃貸のままで良いと思うのです。固定資産税などの税金も発生しなければ、場所を移動する自由も、家族の変化に合わせて間取りを選び直す自由があります。
メンテナンス費用も基本的に貸主持ちですよね。

 それでも「所有」を選ぶ理由は、最低限の住むための機能以上の価値を求めているからではないかと思うのです。(日本では昭和初期の家族像に住宅取得が刷り込まれてしまったのでなんとも言い難い部分ではありますが…)

家は特別な買い物です。
家は贅沢な買い物です。

どうか無理に買わないでください。
人生で一度きりの贅沢は、もっとちゃんと贅沢に経験する方が良いです。

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